野球界に芸術を生み出した男。村田修一はなぜNPBへ復帰できなかったのか

『ウィーン ロード すーすーめー……どーこーまーでーえもおおおおおおお!!!!ム・ラ・タ!』

村田さんの話題を耳にするたび、この応援歌の前奏が、脳内で再生される。

2017年、もはやBクラスも覚悟の上で、東京ドームへ応援に向かった僕の楽しみは、この歌を歌うことにあったかもしれない。

2000本安打達成を目前に控えた稀代のスラッガー。

村田修一は、なぜNPBへ復帰することができなかったのだろうか。

FAではなく自由契約。巨人をクビになる大誤算

巨人の村田さん

2017年オフ、村田修一の自由契約に、巨人ファンのみならず、多くのプロ野球ファンたちがどよめいた。

そのシーズンでは100安打を記録したにも関わらず、なぜクビになったしまったのか。

ベンチウォーマー村田さんの憂鬱

村田さんがクビになる前年の2016年シーズン。

なんと村田さんは143試合にフル出場し、160安打、25本塁打、81打点、打率.302という文句なしの成績を収めていた。

にもかかわらずだ。巨人はなぜか三塁手として外国人助っ人のマギーを獲得。

さらに、阿部慎之助のファーストコンバートが本格的に行われ、サード、ファーストの守備位置を持つ村田さんは完全に干される形となってしまった

この頃の村田さんはベンチを温めながら「暇すぎて本が読めるので、頭がよくなる」という皮肉まで言うほどになってしまう。

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交流戦から猛アピール。再びレギュラーへ

猛アピールって、もうそんなアピールが必要な選手ではない村田さんだが、DH制のある交流戦で出場機会を得ると、これでもかと言わんばかりに活躍し、存在感を示す。

そりゃそうだ、これだけ実績があって、最近までバリバリの主力だった選手だ。試しに使ってみたけど、やっぱダメでしたーっていうような選手とは、一味も二味も違うのだ。中井とは違うのだよ、中井とは。

そんな伝説の男中井大介が見事に失速したおかげで、マギーがセカンドへコンバートされ、村田さんは再びサードのレギュラーを取り戻す。

結果、118試合に出場。打率は下げたものの、100安打、14本塁打というまずまずの成績を残した。

そして自由契約へ……男・村田の消失

打撃、守備、両面で申し分ない活躍を見せつけた村田さん。マギーセカンド起用から、まだまだ村田さんの出番はありそうだ。それにもうすぐ2000本安打だってある。来年が楽しみだ。

そんな状況の中、突然の悲報が届く。巨人村田、自由契約。

なぜ?多くの巨人ファンが狼狽したことだろう。僕自身も、その報せを聴いて、俄かには信じられなかった。

たしかに、村田さんは自分の起用法に満足していないであろうことは、たびたびの発言から察せられたし、もしかしたら、再びFA権を行使する可能性もあるかもしれないとは思っていた。

しかし、まさかの自由契約だ。それは巨人にクビ!と言われたようなものである。

あまりにショッキングな出来事。フロントへ怒りをぶちまけるファン多数。中には、この決定を取り消させるための署名運動まで行う熱心な人まで現れた。

その実、自由契約とは村田さんの状況を慮っての、球団なりの優しさだったことが明かされる。

「どこでもいい。レギュラーとして使ってもらえたら」そんな村田さんの心中を察して、獲得が容易になる本当の意味でのフリーランスへと、村田さんを放出したのであった。

球界の圧倒的若返りムード。再契約できずまたも大誤算

栃木の村田さん

晴れて自由の身となった村田さんだったが、ここで新たな誤算が。

なんと、どこの球団も獲得に名乗りを上げてくれないのだ。

年俸とかどうでもいいから、俺を取ってくれ!!そんな悲痛な叫びも虚しく、村田さんは独立リーグへ進むことになる。

大田泰示の躍進が引き金か?育成の巨人へ転身

まず、村田さんがクビとなった最大の要因は、チームの若返りにあると言われている。

その根本たるは、トレードで日ハムへ移籍した大田泰示の存在ではなかろうか。

巨人の将来を担うスラッガーとして期待されていた大田泰示。毎年期待だけはさせて結果を残せない残念ボーイ。

そんな泰示が、日ハムへ移籍するなりキャリアハイ。この現象によって、世間の巨人叩きが加速する。

巨人は、FA組や助っ人に頼ってばかりいるから、育成ができない。と。

巨人がちゃんとやってりゃ、大田泰示だってあれだけ打てんだよ?おーん?と多くのファンからマウントをとられたわけだ。

そして、大田二世などと揶揄され始めていた岡本和真の存在。

同じ轍を踏ませていては、巨人の面目丸つぶれだ。そうなれば、否が応でも岡本を使わざるを得ない。

そしてしょうがなく、ポジションまるかぶりのベテラン、村田さんが生贄となったわけだ。

FAベテラン出しちゃいますよと。これからちゃんと若手育てますよと。もし岡本が他のポジションの選手だったのなら、村田さんのクビはなかったのかもしれない。

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広島連覇で広がる、若返りの波

さらに不運なことがあった。広島カープのリーグ優勝連覇だ。

広島は、田中、菊地、丸を筆頭に、若手~中堅へ差し掛かる世代の選手が大爆発。育成の広島と言われるほど、選手を育て、結果を出した。

それが一気に、球界全体に“若返り”のムードを作った

能力のある選手を集めるのではなく、選手を育てる。こつこつと。そういう波が球界全体に押し寄せてくる。

当然、村田さんのような、現時点で良い選手だとして、数年後、確実に衰えるであろうベテラン選手の需要は減っていってしまう。

おかげで、村田さんはどこの球団からも手が上がらず、再契約に至ることはなかった。

実際、故障者が続出していたソフトバンクなどと契約していれば、少なくとも出場機会はあったかもしれない。

出ていれば、それなりの成績だって残せたはずだ。しかし、それが行われなかったということは、きっと、各球団とも、目先の補強ではなく、若返りと若手へのチャンスにその枠を使いたかったというのが本音だろう。

野球界に芸術を生み出した男・村田

かくして、再契約されることなく、現役引退をせざるを得なくなった村田さん。

最後に、村田さんの魅力を振り返りたいと思う。

村田さんの代名詞、芸術的ゲッツー

1アウト、ランナー1,2塁。バッターボックスには村田。そんな状況が訪れた時、多くのファンの頭によぎる嫌な予感。

そして案の定セカンドゴロ。ゲッツー。チャンス終了。

そんな光景を幾度となく見せてくれた村田さん。

僕も最初は、そんな光景に辟易し、「村田使えんわ」などと戯言を放っていたものだが、村田さんのファンであり人気ブログ「プロ野球死亡遊戯」の中溝康隆氏の発言により、考えは改めさせられる。

「芸術的ゲッツ―」

村田さんのゲッツーは、アートの域に達している。中溝氏はそう言った。

それからは僕も、村田さんのゲッツーを見るたび、怒るよりも笑えるようになった。

どんな失敗も、笑い飛ばせるものだ。部下や後輩が仕事でミスったときも「こりゃ芸術的な〇〇だ」なんて笑いとばせりゃ、世の中もっと生きやすくなると思うのだ。

まとめ

村田さんの現役引退は、正直ショックだ。僕は最初から、村田さんのことが好きだったわけではないけど。

FA加入の外様だし、思うような成績を出せていなかった、2015年あたりは、ホント嫌いだった。

でも、上に書いたとおり、村田さんの芸術的ゲッツーなんて笑い話ができるようになる頃には、不思議と愛着が沸いていた。

去年、神宮球場へ試合を観に行った折、どいつもこいつも若い女性ファンたちは、背番号6やら7やら22のユニフォームばかり着ていたが、一人、25を背負った華奢なツインテールの女の子を見たことがあった。

その女の子にはときめいたものだ。「この子、わかってるなぁ」って。(その子の後を目で追っていると、めちゃくちゃ体格のいいイカツイ彼氏さんと腕を組んでいたので、「そういう趣味なのね」と苦笑いしたものだが)

よくわかんない髪型、ふてぶてしい顔。時折見せる乙女・村田な一面と、怒りのホームランを放つ男・村田のカッコよさ。

そりゃあ、最初から最後までスーパースターな選手もいいさ。でも、村田さんみたいな、浮き沈みあっても愛されるスターだっていてもいいだろう。

もう芸術的ゲッツーを見ることはできないけど、僕が仕事でヘマでもやらかしたときは、心の中で歌おうと思う。

『走り出した君は、誰にも止められない!』

 

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